先週2/11の火曜日、京都で開催されている黒田辰秋展を見に行きました。京都生まれの偉大な木工家の生誕120年ということで、多くの作品が展示され、来場者の熱気も感じられる素晴らしい展示会でした。地元・京都での開催だけあって、その規模と充実度には圧倒されました。
私が黒田辰秋さんの作品を初めて見たのは、かなり前の豊田市美術館での展示でした。そのときは、ただ「すごい人だ」という漠然とした印象で、感化された私は、趣味で通っていた木工教室で意味もなく剣留め(つなぐ部分を三角形にして接合する継手)に挑戦したりしていました。その後、グリーンウッドワークにのめり込み、思いがけず黒田辰秋さんの意外な一面を知ることになりました。
グリーンウッドワーク普及活動の中で、椅子作りのワークショップを企画することになりました。しかし、当時のグリーンウッドワークの椅子作りは6日間かかり、3連休を2回使うという、なかなかハードな内容で、製作期間の長さが課題でした。そこで、もう少し早く作れる椅子はないかと探しているうちに、「ゴッホの椅子」というものに思い当たりました。『世界の民芸』という本によると、スペインで作られていた田舎の椅子で、「15分で組み立てられる」と書かれていたのを見て、「これなら2日ぐらいで作れるのでは?」と考えました。※結果として15分で組み立てるなんて素人には真似できないので、実際には製作に4日ほどかかりました。
その後、さまざまな資料を調べていくうちに、河井寛次郎記念館に実物があることを知り、実際に足を運んで現物を採寸し復元に挑戦したり、そうした調べる過程がとても楽しく、学びの多い経験でした。そんな中で、「当時の椅子製造の様子を映した8ミリフィルムがあるらしい」という話を耳にしました。それは黒田辰秋さんが撮影した映像で、まだ現存しているというのです。縁あってその映像を見せてもらう機会があり、お孫さんにもお会いしました。驚きとともに感激したのを覚えています。その映像がこちらです。https://youtu.be/WhpZahd_o0M?si=Wqhw2vtuC0ecFVBj
黒田辰秋さんがゴッホの椅子に関心を持った理由も聞くことができました。皇居で使う椅子の製作を依頼され、その研究の一環として世界各地の椅子を視察し、その中にゴッホの椅子も含まれていたそうです。木工のレジェンドみたいな人ですら、椅子作りは試行錯誤しながらの挑戦だったと知り、私からすると辰秋さんも悩みながらものづくりをしていたのだと、とても親近感を覚えました。また、ご家族から聞く辰秋さんの印象は、テレビなどで語られる“寡黙で一徹”のイメージとは違い、人間味あふれる姿を感じ取ることができたのも印象深かったです。
さまざまな試行錯誤を経たゴッホの椅子づくりワークショップは無事に成功し、グリーンウッドワークの定番アイテムのひとつとなっていきました。https://greenwoodwork.blog.fc2.com/blog-entry-493.html
その後、子ども用のゴッホの椅子を作るワークショップを知人の家具店で開催することになったので、限られたスペースでも作業できるように「削り犬」という小型の削り馬を開発したりと、ゴッホの椅子をきっかけに生まれたものは数多くあります。生木を使った木工という、やや邪道かなと思える木工を手繰っていったら、人間国宝につながる貴重な経験を得たというお話でした。
久しぶりにゴッホの椅子を作ってみようかな、そんな気持ちになっています。
黒田辰秋展のテレビ放送は、2月23日(日)にNHK Eテレ『日曜美術館』で、「黒田辰秋 ものづくり問答 森と海と人をめぐって」が午後8時から再放送される予定です。京都国立近代美術館での「生誕120年 人間国宝 黒田辰秋ー木と漆と螺鈿の旅ー」は3/2(日)までですが、3/15(土)から豊田市美術館で新たに始まります。「木工って何?」と聞かれたら、これが木工です、という答えがそこにあります。まだ見たことない方は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。