北海道から帰ってきて2週間、仕事が始まって1週間、やっと落ち着きを取り戻しつつあります。
札幌芸術の森での、「生木でつくるゴッホの椅子」のご報告をしたいと思います。
��今回のブログの写真は札幌のプロカメラマン・並木博夫さんに撮影していただいた写真を使用しました。
いろいろなご縁で、ゴッホの椅子と呼ばれるスペインの民藝椅子を作ることになった経緯、また調査していく段階で見つかった数々の発見、それはとてもスリリングなものでした。
その模様は森林文化アカデミーブログ、「ゴッホの椅子を追いかけて」、「ゴッホの椅子を追いかけて〜京都・美山へ」に詳しく書かれています。参照ください。
では、ワークショップのご報告です。
��長文です。一部熱く技術解説していますが、サラッとお読みください。)
冒頭、2時間ほどかけて岐阜県立森林文化アカデミー准教授 久津輪 雅 氏によるレクチャーが行われました。
話の主な内容は、日本の民藝運動の中でスペインの椅子が見いだされ、その製作現場を日本で初の木工芸分野の人間国宝 黒田辰秋氏が見に行った理由とは、です。
個人的な思いとしては、一脚の素朴なスペインの椅子を、一人のオランダ人画家が描き、時を経てそれを見つけた日本人が椅子を輸入し、後日また違う人が世界の裏側まで見に行く。一つのモノに宿った人を動かす力!そこに不思議と感動を覚えます。
そういったお話の後、いよいよ参加者10名による椅子づくりが始まりました。
こんかいの材料となる白樺、数週間前に準備していただいた生木です。岐阜・愛知の私達には馴染みの薄い木でしたが、北海道では至る所に生えています。話を聞くと、ほおっておいても自然に生えてくるとのこと。本物のゴッホの椅子は、ポプラから作られその材の白さから「白椅子」とも呼ばれていました。シラカバの材色も白く適度な柔らかさ、うってつけの材料でした。
この生木の丸太を割るところから制作スタートです。割った木材を、椅子の脚や背板、貫に削っていきます。
ほぼこの刃物、「銑」だけで仕上がりまで削り上げます。使う道具もシンプルです。
大まかに削った後、半年間に及ぶ試行錯誤の末に開発した計測治具 通称「緑の太貫(タヌキ)」を使用して、この椅子の特徴、丸穴に叩き込む角ホゾを成形します。この大きさが小さいと緩くなり、大きすぎると脚を割ってしまいます。このあたりの加減を見つけるのが大変でした。
ここまでで二日間、全体の部材を削りだして前半終了です。なかなかハードは二日間でした、、この後3日間のインターバルを置いて後半に続きました。
後半二日間は、比較的ゆったりとしたペースになり、穴あけ、組み立て、座編みと進みました。
この丸穴に角ばったホゾを入れる方法、これがかなりの温故知新なんです。
通常、現在の椅子づくりで丸穴にホゾを入れる場合は、ちょっときつめに作ります。木の硬さにより0.1mm刻みで太さを調整し穴よりも少しホゾを太く作ります、それを木殺し(金づちなどで叩いて木の繊維をつぶす)してから、接着剤を使用して組み立てます。接着剤の水分を吸って、木の繊維が膨らみより強い接合となる。スタンダードな木工の技法です。これも理にかなった方法です。
しかしこのゴッホの椅子は、丸に四角を叩き込む!一見乱暴な方法ですが、実はとても合理的。
程よい太さに削った四角いホゾは、木を割ることなく適度に潰れながら入っていきます。+1mmぐらいの誤差なら大丈夫。1ミリというと少なく感じるかもしれませんが、0.1ミリ単位で調整することを思えばかなりの許容範囲です。
適度に潰れているので、膨らもうとする木同士がしっかり密着し摩擦の力でしっかりします。接着剤が無くても大丈夫!素晴らしい人類の英知です。
他にも、四角いメリットはまだまだありますが、語りだすときりがないのでこの辺で(笑)
そのように組み立てた後、飾りで脚の天辺に面取りを施します。シンプルな面取りですが、これでぐっと雰囲気が出ます。
翌日、座編み。
本物は、ガマの葉をよりながら編んでいくのですが、それはさすがに難しいので、イグサを予め縄に編んだもの使用しました。これでしたら、初めての方でも2~3時間で編み終えることが出来ました。
根気のいる仕事ですが、徐々に椅子の形が見えてくるので作業もはかどります。
そして、、、無事全員完成することが出来ました!
参加者、スタッフ全員の表情が、その成果を物語っていると思います。とても充実した気持ちになれた瞬間でした、皆様お疲れ様でした。
このあと、この椅子たちが使われて40年後、中央に置かれたスペインの椅子のように味わい深いものになっていると嬉しいですね。
このゴッホの椅子づくり、これをスタートにいろんな所で広げていきたいと思っています。
もしかしたら、皆さんの近くで開催するかもしれません、その時はぜひご参加ください。
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