2016年2月13日土曜日

新しいラダーバックチェア


全6回、10日間に及ぶグリーンウッドワーク指導者養成講座が無事に終了しました。
何はともあれ、良かったです。

最終講座の椅子づくりの模様は、こちらや、こちらにも紹介されています。

ここでは、新しく設計した椅子の苦労話を書いておきたい思います。

今回の椅子は、久津輪さんに基本的な形をスケッチしてもらい、私が図面に起こして作り方を考えるという分担で行いました。
自分で形まで考えると、作り易い形になり過ぎたり、変なところに凝り過ぎるきらいあるのでこの分担は良かったのではと思います(^^;

アメリカのドリュー・ランズナーさんに教えてもらったラダーバックチェアをベースに、テノンカッターでのホゾ取りでクランプによる接着剤なしの組立は、イギリスのマイク・アボット師匠直伝の方法を継承しつつ、直径10センチ程度の小径木でも作りやすいよう、背板の幅を狭くして、モダンで軽やかに見えるようイタリアのジオ・ポンティさんのスーパーレッジェーラのフォルムを参考にしたり、スペインのゴッホの椅子のような削り跡を残す仕上がりにしたりと、いろんな椅子の要素を取り入れました。

材料のエゴノキは、和傘の「ろくろ」と呼ばれる材料に使われている木です。その中で、太すぎて使えなかったものを利用するというのもこの椅子の大切な部分だと思います。

形のポイントとして、後足と背板のカーブがあります。エゴノキを使ってみてわかったのですが、この木はとても蒸曲げに向いていました。裂けたり、シワが寄ったりすることなくすべてキレイに曲がってくれました。
太い丸太が手に入りにくくなる中、今まで利用されてこなかった雑木と呼ばれている材の可能性を見つけていくことも重要かと思います。

設計には3DCADを使用、2次元の図面で作れないことはないのですが、それだと実際に作ってみないと材料の長さや角度を求めることがで来ません。
短い期間でここまで形できたのは3次元CADのおかげだと思います。それでも試作は3脚ほど作りましたので。



しかし背板の接合部分の加工方法は1週間ほどうなされました。設計図通りにできてもかなり複雑な角度なのに、実際には蒸曲げの、曲げ戻りや、作る人によって微妙に違う脚の太さ、などなどの誤差が出てきて、「ウキィ~~」となります。
※上の三角をクリックすると、3Dの椅子がマウスでグリグリ動かせます。背板の微妙な角度をご確認ください。

最終的には、ウインザーチェアのスピンドルを通す穴あけと同じように「現物合わせ」という力技的方法に落ち着いたのですが、うまくいってホントに良かったです。

やってみて思ったのが、椅子の設計ってホントに大変です。
人が座る家具なので、座り心地という数字には出にくい部分を反映させないといけません。
「座面を1センチ下げて」とかなると、貫の長さ、接合の角度がすべて変わってきます。ちょっといじると全体に影響が出るんですね、勉強になりました。

まだ作る上で、少し複雑な部分がありますのでもう少し改良して次回の椅子づくりに備えたいと思います。